COLUMN

医院コラム

歯周基本治療の本当の意味

「歯石取りしておきますね〜」

そう言われて受けたスケーリング。

でもその時、“ただ掃除してもらってるだけ”と思っていませんか?

実はこの“歯石取り”、単なるお掃除ではなく、歯周病治療の核となる「歯周基本治療」の一部です。

今回は、歯石除去を含む歯周基本治療の本当の目的と重要性について解説します。



歯石取り=歯周基本治療のスタートライン

歯周基本治療とは、歯周病の進行を食い止めるために最初に行う、歯ぐきの健康を取り戻すための根本的な治療です。

その中でも中心になるのが、以下の処置です:

スケーリング(歯石除去)

ルートプレーニング(歯根の滑沢化)

ブラッシング指導(セルフケアの改善)

これらは、細菌の温床である“プラークと歯石”を徹底的に除去し、歯ぐきが炎症から回復できる環境を整えるために行われています。



歯石ってそんなに悪いの?

はい、歯石は「ただの汚れ」ではありません。

歯石は、プラーク(細菌のかたまり)が硬くなって石灰化したもの。

表面がざらついているため、新たなプラークが付きやすく、炎症が慢性化しやすくなります。

つまり、歯石がある限り、歯周病はどんどん悪化していくということ。

歯ぐきの腫れや出血、進行すると歯を支える骨まで溶かしてしまいます。



「見えてる歯石」だけじゃ不十分

患者さんの多くが驚くのが、「歯ぐきの中」にも歯石がついているという事実。

これは縁下歯石と呼ばれ、見えにくいため気づかれにくいですが、歯周病を進行させる主犯格です。

そのため、歯周基本治療ではこの縁下歯石まで徹底的に除去していきます。

ルートプレーニングや局所麻酔を用いた深い清掃も、これに含まれます。



治療は「その場限り」ではない

スケーリングは、その日の汚れを取るだけの処置ではありません。

・炎症をおさえる

・ポケットの深さを改善する

・歯を抜かずに済むようにする

など、将来的な歯の寿命を守るための戦略的な治療なのです。

これを「ただの掃除」と思ってしまうと、治療の本質が見えなくなってしまいます。



歯周病は“静かに進む病気”だからこそ

歯周病は、痛みなく進行するのが特徴です。

「違和感ないから放置」では、気づいたときには歯がグラグラ…ということも少なくありません。

歯石除去をきっかけに、自分の歯ぐきの状態を知り、予防や治療に前向きになることがとても大切です。



まとめ:歯石取り=歯ぐきの命を守る第一歩

• 歯石取りは、単なる掃除ではなく「歯周病治療」の一部。

• 目に見えない縁下歯石の除去が特に重要。

• 痛みがなくても、歯ぐきの中では静かに進行している可能性も。

• 歯周基本治療は、将来的に“歯を抜かずに済むため”の重要なステップ。



「定期的な歯石取り」が、あなたの歯ぐきと歯の健康を守ります。

治療の意味を理解したうえで、メンテナンスに取り組むことが、一番の予防になりますよ!


宇治市 中村歯科医院院長 歯周病学会専門医 中村航也