COLUMN

医院コラム

今やコンビニの数よりも歯科が多いと言われていますが、江戸時代の歯科はどうだったのか気になりませんか?

今回は江戸時代の歯科についてお話ししていきます。


⚪︎ 歯を治す人たちにはいろいろな種類がいた!

江戸時代には「歯科医師」という国家資格はありませんでした。

しかし、歯に関わる職業はいくつか存在していました。

 

■ 口中医(こうちゅうい)

武士や裕福な町人向けに、虫歯治療・歯石除去・入れ歯作りなどを専門にしていました。

基本的には、医者(内科医)と並んで知識人扱いされることもあり、ある程度の教育を受けた人が多かったです。


■ 抜歯師(ばっしし)

町医者や屋台などで「歯抜き専門」の職業についていた人もいました。

– 道端や寺の縁日などで即席の診療をしていた

– 看板に「一抜五十文!」などと料金を書いていたことも

腕がいい人は人気になり、逆に下手な人は噂ですぐに商売が成り立たなくなることもあったようです。


⚪︎どんな治療をしていた?

● 虫歯の治療

虫歯の穴に桂皮(けいひ/シナモン)や丁子(ちょうじ/クローブ)などの香料を詰めて、痛みを抑える方法がありました。

また、鉄製のヤスリや針のような道具で虫歯を削ることもありましたが、非常に原始的で、ほとんど耐久勝負です。


● 抜歯

歯を抜く時には、「歯抜き鉗子(かんし)」と呼ばれる大きな鉄製のペンチのような道具を使いました。

もちろん麻酔はないので、痛みをこらえて一気に抜くしかありません。


● 義歯(入れ歯)作り

江戸時代の義歯は、木製(柘植の木など)や動物の骨、貝殻、金属を使って作られました。

特に精巧な木製入れ歯は、日本の職人技術の高さを象徴しており、鎖国中でもオランダなどから驚かれた記録もあります!


● お歯黒(おはぐろ)

「鉄と酢」を混ぜた液体で歯を黒く染める伝統文化。

歯科師たちは、このお歯黒液の調合や、塗り方の指導もしていました。

お歯黒には虫歯予防効果もあったとされ、意外と理にかなっていたのです!


⚪︎当時の道具たち

– 歯抜鉗子(ペンチ)

– 鉄製のヤスリ

– 骨や木製の義歯

– 口の中をのぞくための鏡(粗い作り)

– 薬草や香料の調合道具

今とは比べ物にならないぐらい、手作り感満載でした。


⚪︎江戸の町にあった「歯医者さん」の風景

– 町中に「歯抜き屋台」が出現していた

– 縁日や祭りで「痛くない歯抜き」をアピールする人も

– 庶民は「歯が痛くなったら抜く」が基本

– 武士や富裕層は、特別に口中医を呼んで治療してもらう


⚪︎まとめ

– 江戸時代にも虫歯治療・抜歯・義歯作りが存在していた

– 麻酔なしでの治療はとても過酷だった

– お歯黒文化は美容と虫歯予防を兼ねていた

– 当時の歯医者さんたちは、高度な技術と職人魂を持っていた!


現代では、無痛治療もできるようになり、すごく恵まれた環境ですよね!

歴史を知ると、今の歯医者さんへの感謝の気持ちも大きくなります!


宇治市 中村歯科医院院長 歯周病学会専門医 中村航也