COLUMN

医院コラム

皆さん猛暑日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか?

外に出るだけで汗が出てしまうほどの異常気象ですが、実は歯科とも関連性があるのはご存知でしょうか?
地球温暖化と歯科の関連性は、一見すると直接的な関係がないように思えますが、実際には温暖化が口腔の健康や歯科医療にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。


1. 気温上昇と口腔乾燥
・唾液分泌量の減少
気温が上昇すると、体温調節のために水分を多く消費することになり、脱水症状を引き起こすリスクが高まります。脱水症状になると、唾液の分泌量が減少し、口腔乾燥(ドライマウス)を招くことがあります。

唾液は、歯の表面を保護し、酸を中和する役割を果たすため、唾液が不足すると虫歯や歯周病のリスクが高まります。


2. 食生活の変化と歯の健康
・温暖化による食糧生産への影響
温暖化が進行すると、農業生産が不安定になり、食生活にも影響が出る可能性があります。特に、栄養価の低い食品や加工食品の消費が増えると、糖分の多い食品が口腔内に長く留まりやすくなり、虫歯のリスクが増大します。

・飲料消費の増加
気温の上昇に伴い、甘い飲料や炭酸飲料を摂取する機会が増えることが予想されます。これらの飲料は歯に対して酸性であるため、エナメル質を溶かしやすく、虫歯の原因となり得ます。


3. 気候変動と歯科医療への影響
・自然災害の増加による歯科医療サービスの中断
温暖化に伴い、台風、洪水、干ばつなどの自然災害が増加する可能性があり、これにより歯科医院が一時的に閉鎖されたり、歯科医療サービスが中断されることがあります。この結果、定期的な歯科検診や治療を受ける機会が減少し、口腔の健康状態が悪化する恐れがあります。

・歯科材料や薬品の供給への影響
温暖化による気候変動は、歯科材料や薬品の製造や供給にも影響を及ぼす可能性があります。例えば、特定の材料の生産が気候変動によって制限されると、歯科治療に使用される材料の品質や供給量に影響が出るかもしれません。


4. 公衆衛生への影響
・感染症の拡大
温暖化が進むことで、新しい病原菌や感染症が広がる可能性があります。これにより、口腔内の健康にも悪影響を及ぼす感染症のリスクが増加することが懸念されています。

・歯科医療へのアクセスの不平等
温暖化が引き起こす経済的影響により、歯科医療サービスへのアクセスが制限される地域や層が増える可能性があります。特に、低所得層や発展途上国では、温暖化が口腔衛生に対する予防ケアや治療を受ける機会に悪影響を及ぼすことが考えられます。


5. まとめ
地球温暖化は、直接的および間接的に口腔の健康や歯科医療に影響を及ぼす可能性があります。気温の上昇や食生活の変化、自然災害の増加、感染症の拡大などが、虫歯や歯周病のリスクを高める要因となり得ます。これらのリスクに対応するためには、予防ケアの強化や公衆衛生への取り組み、歯科医療の適切な管理がますます重要になります。

宇治市 中村歯科医院院長 歯周病学会専門医 中村航也